報道写真の先駆者・名取洋之助の仕事「ドイツ・1936年」
2005年は「日本におけるドイツ年」です。これにちなんで、JCIIでは、我が国報道写真の先駆者・名取洋之助(1910-1962)が20代に活写した1936年のドイツの写真作品を紹介(会場:JCIIフォトサロン)し、併せて、名取が配信した写真で誌面を構成する海外のグラフ雑誌記事などを解説(会場:JCIIクラブ25)する「ドイツ・1936年」を開催いたします。
1931年にミュンヘンで報道写真家となった名取は、間もなく首都ベルリンのグラフ雑誌で活躍するようになりました。しかし、1933年にヒットラーのジャーナリスト人種規制によってウルシュタイン社特派員として日本に拠点を移すこととなり、写真家・木村伊兵衛、デザイナー・原弘らとともに我が国で初めて「報道写真」を標榜するグループ「日本工房」を設立します。1934年には日本文化を外国に知らせるグラフ雑誌『NIPPON』を創刊するなど、国際語である写真とモダンデザインで国境を越える仕事を重ねたことで知られています。
名取は、1936年から37年にかけてドイツ・アメリカに外遊し、約1年間滞在したドイツではオリンピックベルリン大会(8月1日-16日)などを取材して、グラフ雑誌『Berliner Illustrierte Zeitung』などに写真を寄稿しています。
本展の作品編は、名取の見たオリンピック、妻・エルナとオープンカーで巡った風光明媚なドイツ各地などの写真をJCIIフォトサロンで展示します。また、資料編は、ドイツで活躍していた1931年から日米開戦前までに名取が配信した写真で構成されているヨーロッパ各国のグラフ雑誌記事などをJCIIクラブ25で紹介します。
「ドイツ・1936年」のシリーズはほとんどが未発表であり、また、この頃に名取の写真を掲載したヨーロッパのグラフ雑誌もほとんど知られていません。未発表・未確認であった作品やさまざまなグラフ雑誌によって、70年前の時代と社会、日本とドイツ、そして、我が国報道写真の先駆者・名取洋之助の姿が浮かび上がってきます。
なお、本展では、ベルリンオリンピック棒高跳び選手・西田修平氏と大江季雄選手が銀・銅メダルを分かち合った「友情のメダル」(早稲田大学大学史資料センター所蔵)をJCIIフォトサロンにて展示いたします。
※12月17日(土)には、関連イベントとして、JCII共催・名取研究會シンポジウムを開催いたします。
名取 洋之助 (なとり ようのすけ)(1910-62)
東京生まれ。慶応義塾普通部卒業後、渡独。1931年から報道写真家としてドイツのグラフ雑誌で活躍した。1933年に帰国して報道写真を標榜する日本工房を結成し、海外への写真配信に携わる一方、『NIPPON』など対外宣伝グラフ雑誌を刊行。戦後は、『週間サンニュース』『岩波写真文庫』などの企画・編集・制作に携わり、晩年は中国の麦積山やアルプスのロマネスクの撮影を重ねた。1954年に日本写真協会賞功労賞を受賞。作品集『GROSSES JAPAN 大日本』(Karl Specht、1937年)、『麦積山石窟』(岩波書店、1957年)、著書『新しい写真術』(慶友社、1955年)他多数。没後、独自の報道写真理論が『写真の読み方』(岩波新書、1963年)にまとめられた。
タイトル
報道写真の先駆者・名取洋之助の仕事「ドイツ・1936年」
開催期間
作品編 JCIIフォトサロン 2005年11月29日(火)~12月25日(日)
資料編 JCIIクラブ25 2005年12月13日(火)~12月25日(日)
展示内容
作品編 全75点(全作品とも1936年撮影・モノクロ・初公開)
・オリンピックベルリン大会
満員の観衆が沸くスタジアム、この大会から行なわれた初めての聖火リレー、銀・銅メダルを半分
ずつに割った「友情のメダル」で知られる棒高跳びの西田修平、「ガンバレ」の声援で金メダルに
輝いた前畑秀子、マラソン金メダリスト孫基禎、陸上で大活躍のジェシー・オーエンス(アメリ
カ)など。
・ドイツ紀行
メルセデスのオープンカーで妻とドイツを巡って活写した風光明媚なドイツ各地の自然や美しい民
族衣装の人々。
資料編 約40点(1931-41年に刊行された欧米のグラフ雑誌)
名取の写真配信で構成された、ドイツをはじめとするヨーロッパ各国の雑誌記事をパネル展示。各
資料の解説は、雑誌記事抄訳や、名取及び関係者の言葉などで構成。
・名取ドイツ時代
1931~32年のドイツ時代に撮影・寄稿された雑誌記事。ザルツブルグ演劇祭、イスラム教徒の女性
など。掲載紙は『Muncher Illustrierte Presse』ほか。
・くらし
日本の都市計画、黒焼屋、日本の旅館ほか。掲載紙は『Berliner Illustrierte Zeitung』ほか。
・女性
日本の花嫁学校、海辺の若い女性ほか。掲載紙は『Miroir du Moude』ほか。
・芸能
東西の「制服の処女」、歌舞伎、噺家ほか。掲載紙は『Muncher Illustrierte Presse』ほか。
・スポーツ
相撲、馬事大会、水泳の授業ほか。掲載紙は『Berliner Illustrierte Zeitung』ほか。
・取材旅行
朝鮮、アメリカ、上海、満洲。掲載紙は『Die Dame』ほか。
・名取撮影の写真による雑誌表紙
1932~41年。掲載紙は『LIFE』ほか。
図録販売
今回展示される作品を収めた図録を制作し、フォトサロン受付にて販売します。または通信販売もご利用いただけます。
図録はこちら
開館時間
10:00~17:00
休館日
毎週月曜日(祝・祭日の場合は開館)
入館料
無料
所在地:102-0082 東京都千代田区一番町25番地 JCIIビル
交通機関
- 東京メトロ◎半蔵門線半蔵門駅下車 4 番出入口より徒歩 1 分
- 東京メトロ◎有楽町線麹町駅下車 3 番出入口より 徒歩 8 分
- 都営バス「都03 (四谷駅 – 半蔵門 – 日比谷 – 銀座四 – 晴海埠頭)」
- 都営バス「宿75 (新宿駅西口 – 東京女子医大前 – 四谷駅前 – 半蔵門 – 三宅坂)」
半蔵門停留所下車 徒歩 4 分
- 駐車場はございませんので、お車でのご来館はご遠慮ください。
- 日本カメラ博物館とJCIIフォトサロンの入り口は異なりますのでご注意ください。
- 日本カメラ博物館へご来館の際は、お足もとが不自由な旨ご連絡いただければ、エレベーターにてご案内いたします。
- JR東京駅からは、東京メトロ◎丸の内線東京駅→大手町駅にて◎半蔵門線に乗り換えると便利です。